⑩「非常通信手段について」考えてみた
Contents(目次)
1.携帯電話は使える?
- 山登り、山歩きにおいて、携帯電話は非常通信手段として重要な装備です。通話が可能、であれば、これほど心強い確実な通信手段はありません。
- 携帯電話の通話可能範囲は年々広がってはいますが、アンテナの設置と維持は、携帯電話会社にとっては経費となります。このため、ユーザー数の少ない所まで、通話エリアを積極的に拡大することはないと思います。
- 私の山登りの経験は最新ではないので、現在では状況が変わっているかもしれませんが、以前は、メジャーな山域、メジャーな山の方が、携帯電話がつながりやすかったように思います。地方の低山の方は、ほとんどつながらない…
- また、山の中、山の上では電波の状態が不安定なので、電波状態を示すアンテナの本数も、“圏外”かと思えば“3本”に変わる等、安定していません。これは、電波の状態が悪い、電波がつながるギリギリの所であるということです。
- それでも、携帯電話がつながる可能性を信じ、山登りには持参すべきです。さらに言えば、登山客の少ない不人気の山、地方の低山に行くのであれば、なおさら持参して下さい。もちろん、持っていても非常時に使えなかったということもあり得ます。でも非常時に役に立つこともあります。必ず山行には持参するようにして下さい。
- 通話可能範囲が広い携帯キャリアはドコモとのこと。ドコモでは登山道で携帯が使える様、基地局を拡大されているようです。良いことだと思います。但し、全ての登山道で使えるわけではなく、やはり人の多いメジャーな登山道からの整備となっているように見受けられ、地方の人の少ない里山は…
2.携帯電話は無線機器
- 携帯電話は無線機の一種なので、電波で通信します。つまり通話可否は電波状態に左右されます。
- 電波は開けたところ、高い所の方が、状態が良くなります。つまり山であれば頂上、見通しの良い尾根筋の方が電波の状態が良くなります。もし非常時に携帯電話が必要となった場合には、まず尾根筋、見通しの良い場所に出るようにしましょう。特に市街地が見渡せる場所であれば、携帯電話がつながる可能性が高くなります。
- また、ほんの少し(数メートル)移動しても、電波状態は変わります。携帯電話の向きによっても変わります。恐らくですが携帯電話のアンテナは、内部で基板に沿って貼られていますので、基本的には携帯電話を立てるようにした方が、水平にするよりも電波の状態は良くなるはずです。また垂直に立てた状態で、向きを変えても電波状態が変わる可能性があります。あきらめずに電波状態の良い状態を探してください。
- 携帯電話の無線出力は、0.5W前後と言われています。私も正確には知らないのですが、この出力は、無線機としては小さな出力です。でも、街中で使われている免許不要の特定小電力トランシーバーの出力は、この1/50の、0.01Wの出力です。この0.01Wの出力で、市街地では200m~300mの交信が可能です。
- トランシーバーはある意味、無線通信用に特化した機能を有しており、この出力が0.01Wしかない特定小電力トランシーバーも、実は“見通し距離”(相手が見えている距離)ならば、ほぼ無線通信が可能。つまりは、はるか遠くの山頂と平野部でも、平野部から山頂が見えていれば、電波は10km以上も届きます。事実、私自身も大分県の山頂から愛媛県の山頂との間で、特定小電力トランシーバーでの交信を行ったことがあります(確か直線距離で200km以上)。
- その理屈から見れば、携帯電話の出力は、そこそこの出力なのですが、無線通信機の要はアンテナ! 携帯電話のアンテナは内部にコンパクトに収まっており、遠距離交信には向きません。
- これは私の勝手な推察なのですが、携帯電話のアンテナ、本格的なものが外付けできるものがあれば、通話可能距離はかなり長くなるのではないか? と思っています。まあ、一部の登山者のために、そんなスマホを作るような会社は無いでしょうが…
- これも私の推察の域を出ないのですが、携帯電話の基地局の電波は、電波を送受信するための専用アンテナを、ビルの屋上等の高い所に設置してあり、電波の出力もかなり大きいため、かなり遠くまで、恐らく山の上の方まで届いていると思います。しかし携帯電話側の出力が小さく、アンテナも内蔵の貧弱なものであるため、携帯電話の電波が基地局まで届かないことが、通話出来ない理由ではないのか? と思います。携帯画面のアンテナマークは、基地局に認識されているかどうか? を示しているのではないかと勝手に推察しています。なので、携帯電話側の電波をいかに飛ばすか? が大事なのではなかろうか?
- そう思ってネットを調べてみたのですが、同じようなことを考える人が少ない様で、ほぼ情報がありませんでした… ガラケーの場合には、外付けのアンテナ等がありましたが、スマホの場合にはそういうのも無い様で… 外付けアンテナ対応のスマホが出れば、一部の人には喜ばれるはずなのですが…
3.無線機(アマチュア無線機)
- 携帯電話も無線機(アマチュア無線機)も、電波を利用する通話機器であることには変わりはありません。
- 無線機も電波を送受信して通話するため、電波の届く位置にいないと、役に立ちません。つまり、頂上や尾根筋等、開けた場所に居なければ、まず電波が相手に届かない。この辺は携帯電話と同じです。
- またアマチュア無線機については、携帯電話よりも広範囲に電波を飛ばすことが出来ますが、この範囲に交信可能な人が居るかどうか? は運次第。携帯電話は、電波が届き通話が成立する所に居れば、あとは警察や消防等、救助を求める電話を掛けるだけです。しかしアマチュア無線というのは、通話の相手が居ないと交信が成り立ちません。この通話の相手は不特定であり、無線機で通話を呼び掛けた時に、無線を傍受している人、つまり交信してくれる人が居なければ、救助を呼べない、呼んでもらえないのです。傍受していても、応答してくれるという保証もありません。
- アマチュア無線機は、その名の通りアマチュア、つまり趣味のものです。昔はKing of Hobbyとまで言われ、多くの人が無線を趣味としていましたが、昨今は登録局数も減り、一部のバンド以外はガラ空き状態となっています。さらにアマチュア無線を趣味にする若い人も減っており、趣味人口としては減少しています。
- つまり、アマチュア無線の場合には、通信の相手方 がそこに居てくれなければ、非常通信が成立しない ということになります。この辺はやはり運次第。ただ、現状では未だ、それなりの無線人口がいるようで、また山頂からの通信の場合、広範囲に電波が届きますので、傍受している人もそれなりには居るはずです。
- アマチュア無線機を非常通信手段として考える場合、通信の相手方が存在して、さらに言えば、この相手方が警察なり消防に電話連絡してくれることにより、非常通信が成立するという事は、知っておくべきことだと思います(まあ無線家の方には釈迦に説法ですが…)。
4.アマチュア無線について
- 私の場合、アマチュア無線の免許を取得したのは、山登りを始めて、しばらくしてから取得しています。免許取得の明確な理由は無かったのですが、結婚して一人で山登りに行く場面が増えるように思い、無線機も非常通信用にあった方が良いかなと考えて取得しました。
- アマチュア無線は4つの級に分けられており、最も簡単な4級は、さほど難しい試験ではありません。まあ資格と言えば資格ですが、仕事には全く役に立ちません。それでも勉強は必要だし、試験申し込み、合格後の免許証発行申請手続き等が必要です。
- さらに無線機を買わなければなりません。登山用にはコンパクトなハンディ型無線機が良いのですが、そこそこの値段がします(まあスマホの機種代金と似たようなもの)。
- 加えて、無線機を買っても、今度は無線局申請が必要なのです。小さくてもアマチュア無線機は、無線で不特定多数とのやりとりが出来る機器であり、無線局としての開局申請が必要なのです。これがまた結構面倒というか小難しい… またこの局免は有効期間が5年しかないので、都度更新が必要という、ちょっと面倒なものになっています。
- ここまでして、ようやく電波が出せるようになるというものなので、非常用に揃えるには、結構ハードルが高いのが実情。私は無線に少し興味があったから、無線局開局までしましたが、興味が無いと、ちょっと手を出しにくい面があります。
- アマチュア無線をあくまでも非常通信手段用と考え、以外の時には使用しないと割り切るのであれば、それはそれで全く問題ありません。ただ、せっかくなのでアマチュア無線の趣味の世界も覗いてみよう! となった場合、それはそれで面白い面もあります。私も免許取得後は、しばらく趣味の世界を覗いていました。いろんな人と交信して話が出来るという面白みもあります。ただ、どんな趣味でもマナーやルールがあるので、その辺は押さえておきましょう。
5.実際の非常通信手段をどう選ぶ?
- 携帯電話は現在、ほとんどの方が所有されていると思われ、必携です。
- アマチュア無線機は、あった方が使えますが、なかなか0から始めるのはハードルが高いのが実情。ただ、アマチュア無線通信技師の免許を持たれているのであれば、ぜひ無線局免状まで取得されてでも、資格の有効活用と考え、登山にも持参されることをお勧めします。もうあくまでも保険、使わないにこしたことは無いのだけれど、あった方が役に立つと思います。
- 今は、アマチュア無線以外に、簡易デジタル無線というのがあります。これは申請だけで使える無線機で、電波出力もそれなりにあります。もともとは特定の相手方との通信用機器ですが、これをアマチュア無線のように不特定多数の相手との交信、つまり趣味的に使う人が増えています。この辺は実際に非常用に使えるかどうかは未知数ですが、興味があれば選択肢に入れるのも有りだと思います。
6.携帯電話の使用に際し
- 今はスマホのGPS機能、ナビ機能で登山道の道迷い防止にも役立てることが出来ます。そういう意味でもスマホを登山に活用されている方は多いと思います。
- 大事なことは、電池の消耗が早い点、だから必ず予備のバッテリーを持参してください。非常時に電池が無くて役に立たないというのは最悪です。必ず電池残量を念頭に使用を心がけて下さい。
- 特に“圏外”の状態では電池のロスが激しくなりますので、ご留意ください。機内モードにする、電源を切っておく等の節電を。