⑪「初めての北アルプス遠征(2000年)」

(猿倉登山口より白馬山方面)

Contents(目次)

1.北アルプス遠征に行くきっかけ

  • いつだったか忘れましたが、役場勤めの実家の友人との話の中で、友人が山登りに行ったとの話になり、信州だの松本などの地名が出て、「どこの山? まさか長野?」などと思いながら聞いていると、どうも北アルプス辺りに行った模様。
  • この友人、普段山登りとは無縁の生活をしているのですが、勤め先の役場に山登り好きの人が居て、半ば無理やり連れていかれた模様。本人曰く「仕事が終わって、すぐに車に乗せられて一晩中走って、そのまま朝から登山だった。山小屋みたいな所に泊まった。夜景が綺麗だった、でも死ぬほどしんどかった…」との話。話を聞きながら、「ほう、そういう遠征の方法があるのか!」と妙にその強行登山に興味を持った次第。
  • (しかしこの友人、それなりには荷物も持っただろうし、初心者連れにて、登りやすい山だったと思われるが、それでも北アルプス! 普段全く山歩きも、運動らしい運動もしていないのに、なんと超人的な基礎体力というか、連れて行った人も、相当な世話好きなのか? 本人、山に興味が無く、登った山の名前すら憶えていない…)
  • そのころ私は、近所の低山登山をしていて、その友人と、最近は山登りしているとの話になり、先の話が友人から出てきたように思います。普段は近所の低山に日帰りで登っていて、たまに久住や阿蘇山にキャンプを兼ねて出かけていました。この友人の話があり、自分も、もっと普段とは違う所に行ってみたいなあと思うようになり、それまでは考えもしなかった、北アルプスへの遠征を、実現すべく計画しました。多分、友人の話が無ければ、北アルプスにまで行こうという考えは、出てこなかったのかもしれません。
(登山口 猿倉荘)

2.さて、どの山に行く?

  • 最初から“北アルプス”に決めていたわけではなく、“アルプス”と名が付く所に登ってみたいというのが、もう最初の大雑把な目標でした。実際、日本アルプスというのが、どういう所なのか、全く予備知識もなく、もうあこがれだけの想像の世界でしたので。
  • で、本や地図を買って調べてみると、どうやら日本アルプスは、北、中央、南 があるらしい。で、最も山域が広く、人が多いのが北アルプスというのが分かりました。で、最初は初心者だから、メジャーな山にしようと、北アルプス白馬岳に行くことにしました。
  • 白馬岳(はくばだけ)、地元の人は“しろうま”と言うと本には書いてありましたが、はくば という名前は以前から知っていたというか、大阪在住時、会社の同僚が、“はくばスキー場”にスキーに行くのを誘ってくれたので(そのスキー旅行は、体調不良にて行けなかったのですが)。なので、何となく親しみのある名前だったのと、やはり大雪渓が見たい! また比較的初心者向きと書かれてあったことが選定理由。
  • あと、中央アルプス、南アルプスの方が距離的に遠かったように思います。最初の北アルプス遠征については、すんなりと行先が決まった記憶があります。
  • 日程については、実家の友人の例に倣い、というか、会社員の身の上、夏季にそれなりに休めるのは、お盆休みだけ。
  • 山行は、猿倉登山口から大雪渓―白馬山(ここで一泊)、二日目は白馬岳から朝日岳へ、三日目は蓮華温泉に下山のルートとしました。(昔、登山ガイド本「新版・空撮登山ガイド7(山と渓谷社)」という本がありました。その本の中にあった、「白馬・鹿島槍・針の木岳 コースガイド3 ~白馬岳から朝日岳、蓮華温泉~」のコースの通りのルートで計画しました。)
(白馬大雪渓 数珠つなぎの登山者)

3.事前準備(経験値と体力づくり)

  • それまで、キャンプの経験はあっても、テントでの山中泊の経験もなく、いざ北アルプスへ行くと決めても、とにかく経験値が足りない… また、体力も足りない… 体力足りないけど、テント泊が良い! というか山小屋はすごく混むと本に書いてあり… 私個人的に隣に人が居ると寝れないので、山小屋は却下! 残るはテント担ぐしかないという、消去法。
  • 毎回の山行をきちんと記録しているわけではないので(日付と行先程度の記録がある…)、いつごろから準備に入ったか? 恐らく8月に向けて、4月くらいから体力UPを図っていたように思います。近くの低山登山でも、縦走コースを歩いたり、荷物は水を担いで少しずつ重さに慣れる様にしていました。
  • 荷物の重さを事前に確認するため、20kgのバネばかりを購入し、山に登る前に重量を確認していました。重量調整は水の入ったペットボトルにて、「今日は〇〇kgにするぞ!」と徐々に重量を上げる方向で、がんばっていました。
  • 8月の本番に向けて6月には、近所の低山でも、長いコースが取れる縦走路をテントを担いで歩き、初めての山中テント泊予行練習も行いました。それまで、テント泊自体はキャンプ等で経験があるので、特に困ることはありませんでしたが、この低山の縦走路には、当然ながらテント宿泊地など無いので、テントが張れる場所を探して、何とか狭い場所ながら、テントを張ったのを覚えています。この山行、1日目は雨だったので、雨の日の練習にもなりました。基本、雨の日にわざわざ登山なんかしないのですが、北アルプス遠征が晴れるとは限らず、練習と思い雨の中歩いた記憶があります。
  • 7月には大分 久住山にてテント担いで山中泊。こちらは九州でもメジャーな山域なので、登山客も多く、山小屋もある、山の中に温泉もある。有名な“坊がつる”キャンプ場で一泊しました。ここは標高が1,200mにて、夏でも夜は涼しい! 
  • 8月の遠征まで、月に2、3回は山に登り、徐々にザックの重さに慣れる様にし(最終的に20kg前後まで担げるようにしました)、体力も上げました。体重はどうだったか? 山に登るのに負荷を減らすため、自分の体重も落としました。そのころは独身寮に入っており、寮のまかない飯、白米を食べずにおかずをつまみにビールを飲んでいました。あの頃は晩飯の白米抜くだけで痩せられたのに…
(白馬大雪渓 上部)

4. 事前準備(装備)

  • 北アルプス行きは、会社の後輩と私の3人で行くことになりました。山中泊は2泊3日。
  • 北アルプス遠征の場合、重たい荷物を持って歩くわけだから、荷物は最小限にしたく、事前に装備リストを作っていました。リストは、必要装備を忘れないため、およびムダな装備を省くため、加えて荷物を担ぐ分担を決めて、重量を平均化しました。このリストは今でも残っています。このブログを書くのに見ましたが、懐かしさがこみあげる…
  • 複数名で行くメリットは、ソロで行くよりも、共用装備の分、各自の負担が減らせることです。私が個人的に考える最良の人数は4人かな? テントは2つで済むし、調理道具も1セットで4人分まではなんとかなる、車も4人分までは何とか荷物は載せられる。まあ実際には4人揃わず、3人で行くことになりました。
  • 今、装備リストを見返してみても、食べ物は粗食… 米10合とかチキンラーメン、レトルト牛丼、さんま蒲焼缶詰、FDリゾット。山行中の食事の記憶は殆ど無いので、たいしたものは食べてないけど、テント設営後、冷えた身体に、温かいメシは、なによりのごちそうだったと記憶しています。
  • 荷物は事前に準備し、前日に再度点検してザックに詰め込みました。最初の遠征で緊張感があり、忘れ物が無いように何度も確認したなあ。
(高山植物)

5.いざ出発!

  • 旅程は、3泊5日、山行は2泊3日。出発前日に荷物は車に積み込み済。ガソリン満タン。
  • 2000年8月11日:初日は会社を15時に早退し、速攻で帰宅、16時には出発。参加者1名は自宅だったので、まずその家に向かいました。予定では17時半には高速にのるようになっていました。
  • 車は2000ccのワゴンでしたが、3人と荷物で満載状態でしたね。4人は無理だった!(4人の場合は、屋根の上に荷物を載せないと、室内には入らない…)
  • そのまま一晩中車で走り続け、朝に現地着予定。走行距離は930kmほどです。高速を下りて、白馬駅まで車で行って、周辺の駐車場に車を停めます。そこからタクシーに乗り換えて、猿倉登山口へ。
  • 往路は山陽自動車道―名神―中央自動車道を走りましたが、夜中でも中央自動車道は結構混んでいました。結果的には到着予定時間に影響するほどの渋滞ではありませんでしたが、「遅くなったら予定変更か?」と少々あせりました。
  • 元々、3人で交代して運転する予定でしたが… 結局車の持ち主である私が、ほとんど運転しました。元々寝つきが良くなく、車の中では大して休めないので、であれば後輩二人を寝せておいた方が良いかなと。
この本で事前に駐車場を選び
場所を確認した
  • 白馬駅に着いて、事前に調べておいた駐車場へ。そこからタクシーで移動するのですが、タクシーの手配には、さほど困らなかったように思います。さすが登山観光地。タクシーに乗って、猿倉登山口に到着する手前で、「あれっ? ここ来た事あるなあ…」 全く覚えていませんでしたが、大阪在住時、バイクでソロで出かけた時に、この辺にテント張って泊まったのが、猿倉登山口の手前だったのです! 当時はそこが何処かもわからず、景色が良さそうにて泊まっただけですが、まあ自分でも最初はデジャブー? と思いました。
  • なんやかんやで登山口。もうこのころにはタクシーで揺られ、睡魔が最大に襲ってきていました… もう全くテンション上がらず… いやいや、ここまで来たら行くしかない…
  • 白馬登山は、もう20年も前の話なので、詳細な記憶は薄れていますが、確か登山口からしばらく歩くと雪渓に出たように記憶しています。登山の最盛期は7月の海の日、その次がお盆にて、人気の白馬大雪渓には、人がたくさんいました。普段は人が多いのはイヤなのですが、さすがにメジャーな山には人が居た方が、雰囲気も出る。
  • しかし真夏なのに雪が残っているのが不思議ですね~ はるか上まで雪渓がつながっていて、人もつながっている。山容がいつもの低山と違うので、すぐ近くに見える距離が、いくら歩いてもたどり着かないように思いながら登っていました。さすがに雪の上なので、涼しかったです。
  • 雪渓なので、アイゼン装着していないと、滑落の危険があります。当然ながらアイゼンは装着していましたが、私は数百円で買っていた、金具のみの4本詰めアイゼン。これを紐で靴に固定していました。後輩二人も似たように小さい4本詰めアイゼンでした。今だったら、もう少ししっかりした6本爪アイゼンを使いますが、その時は、その小さなアイゼンでも、雪に刺さる感触が妙に安心感があるなあと思いながら歩いていました。
  • 雪渓が終わってしばらくすると、確か山頂、山小屋が見えてきたように思います。ただ、見えてからが遠いというか、なかなか山頂付近にたどり着かない。まあ、周りにはたくさん人が居て心強いというか、自分のペースで歩けないというか、早く荷物を下ろしたいなあ…
  • 白馬山は、確か山小屋の下の方にキャンプ指定地があったように記憶しています。1日目は徹夜明けの登りなので、もうクタクタでしたね、何とかテント張って、山小屋にビールを買いに行ってもらって、晩飯作って至福の時間の後、20時には寝ていました。さすがに徹夜明けの山登り後ですから、もう眠りを堪能するくらい、良く寝た! この点はよく覚えている。
  • 二日目の朝は、もうぐっすり寝た後なので、快調そのものでしたね。二泊三日の山行の場合、私は二日目が最も楽しいと思います。一日目は基本、垂直位置を上げるのが主、三日目は下山が主なので、二日目の水平移動(まあルート次第ですが)、尾根の縦走歩きは、アルプスならではの路歩きとなり、一番楽しい1日だなあ。
  • 縦走路の路の詳細は覚えていないのですが、白馬から朝日岳への縦走は、確かあまり人が居なかったように記憶しています。北アルプスでも北の端の方であり、コース的に不人気なのかも知れません。まあそれでも地方の低山とはわけが違いますが… 所々に氷結というか、雪が残っている所があり、面積が広い所はアイゼンを装着しましたが、アイゼン装着も面倒なので、そーっと滑らないように移動する場所もありました。縦走路なので大きな登りもなく、地図上、距離はありましたが、予定通り二泊目の宿泊地に到着しました。結構曇っていてガスがかかっていたので、景色には恵まれず、このため頭の中に記憶している映像は、凍った地面の部分の印象が強く。
  • 途中、雪解け水が流れている所があり、ここでタオルを洗い、身体を拭き、頭を洗いました。冷たい水でしたが、頭を洗うとスッキリしました。
  • 二日目の宿泊地のことは、ほとんど記憶にないのですが、三日目は下山、蓮華温泉に向かって歩きます。このルートはさらに人が少なかったような… 所々広い所があり、道が分かりにくい所もありました。また、この日は蓮華温泉からバスに乗らないといけないので、バスの時間、14:20までに下山しなければという、少しプレッシャーの中、歩いた記憶があります。
  • 蓮華温泉まで、無事予定時間前にたどりつき、バスでJRの駅まで移動。このバスが狭い山道をひたすら下りていきます。途中、対向車が来ても狭い道なので、すぐには離合できず、対向車の普通車が下がるしかありません。バスの運転手さんもその辺慣れたもので、片手で相手を拝むように会釈し、あとはじっと相手が下がるのを待っています。高い位置から、相手の車が下がっていくのを見るのは、なんとなく偉くなったような… まあ坂を下っているバスをバックで登らせて離合させるのは、現実的に厳しいので、下から上がってくる車が下がるしかないのです。そんな日常にはあまり無い模様を眺めながら、3日間の登山の余韻に浸っていました。
  • バスでJRの駅まで行き、そこから車を置いている白馬駅まで電車にて移動、無事に車まで戻りました。車に乗ったら、まずは風呂、とにかく温泉です。急ぎ最寄りのフロに速攻で入りましたが、4日間の汚れを風呂で落としお湯に浸るのは、最高に気持ちよかったですね。
  • その後は予定では、高速インターまでの移動の間に適当な場所で野宿して帰る予定になっていました。確か河原でテントを張り、余韻に浸りながら酒を飲んでいたように思います。そうして帰宅の途についたと思うのですが、この辺は消化作業的なのか、もう記憶もおぼろげです。恐らく3日間の余韻、思い出話をしていたのだろうと思いますが、帰宅の車での移動も含め、この辺は記憶が全くありません。そんなもんなんだろうなあ。
(花の名前は分からねど… 素朴な花の数々)

6.旅を終えて

  • 殆ど、本の情報と、インターネットの情報だけを頼りに、自分流の初めての北アルプス遠征を終えましたが、ただ20年前、インターネットはありましたが、まだダイヤルアップ接続にて、ネット上の情報も今とは比べものにならないくらい少なかったです。なので基本は本の情報が頼りした。ヤマケイの本が無ければ、遠征は無理だったろうなあ…
  • 大したことでも何でもないのですが、それでも自分たちだけで北アルプスのテント泊登山をやり遂げた達成感は大きかったですね! 雄大な景色、自然に触れることが出来て、やはり感動しました。日常生活に忘れかけている感動、やっぱ大事だよな。
  • 会社の同僚、後輩と山登りを始めましたが、誰一人経験者はいないので(学校の遠足程度の経験、ないしは数人が久住に登った事がある程度)、逆に先入観無く始められたような気もします。
  • 登山も徒歩旅行の一種と思っており、旅の終わりは、イベントが終わった感傷ではありませんが、なんとなく寂しいですよね… 登るまでの不安や期待も、終わってしまえば過ぎた過去… ただ、「来年も必ず行くぞ!」と思っていたのは確かです。そう思える山の旅だったことが何よりです。

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