③‐1「ストック」について考えてみた
Contents(目次)
1. 山登り、山歩き用のストックとは?
- ストック=トレッキングポールの名称の方が一般的でしょうか? 一般的には、伸縮機能を持つストックを指すようです。
- 以前読んだ本に書いてあったことですが、ヨーロッパの方では、山歩きでもスキーストックを使う人が多いそうです。つまり、山歩きにおける基本的な機能は、スキーストックでも同じということ。伸縮するから、ザックの脇に挿して持ち運びやすいのがメリット。他方、登山口まで車で行く場合、ストックを登り下りで使用するのであれば、伸縮機能は不要なので、スキーストックでも全く問題無いということです。私も複数名での山歩きの際、自分のストックを初心者の方に貸すため、スキーストックを使ったことが何度もありますが、機能、使い勝手は全く同じです。実は、後述しますが、スキーストックの方が安心して使えるとも言えます。
2. ストックを選ぶ場合の注意点
- 山歩き初心者の方に、「ストックを選ぶポイントは?」と聞かれて、「ぶっちゃげ、何でもいいです!」と言ったら語弊はありますが、選ぶポイントは、さほど多くありません。伸縮するトレッキングポールの場合、何より大事な機能は、「荷重をかけても縮まないこと」です。どういうことか?
- トレッキングポールは、伸縮するのが特徴です。一般的に3段式のものが多く、下段の方は固定位置が決まっていて、上段側には長さが印刷してあり、必要な長さの所で固定します。この固定方法についてはレバー式とスクリュー式があるようですが、一般に売られているのはスクリュー式が多数だと思います。固定方法は問わないのですが、選ぶべきポイントは、「荷重をかけて縮まないこと」(大事なので2回書きました)。
- レッキングポールは、登りの脚の負荷の一部を腕で負担することにより、疲労を軽減するのが最大の目的ですが、他にも、①ポールを使うことにより歩くリズムが刻みやすくなる、②平たん路での安定、転倒防止、そして③段差な大きな下り箇所での支えになる という大事な使い方があります。
- 「転ばぬ先の杖」とは意味は違うのですが、トレッキングポールは下りでも非常に有用となります。段差の大きな所を下りる時、ポールが無い場合には、山側に向いて脚を下ろして降りる場合と、お尻を地面につけながら脚をそっと足が着ける所に置いて、その足を踏ん張って降りる場合とかあります。これがポールがあると、先に段差の下の地面にポールを突き、ポールに体重を乗せて支えながら、ゆっくりと脚を下ろして降りることができます。文章だと分かりにくいかも知れませんが、慣れてくると、比較的段差の大きな登山道の場合、この降り方を多用するのです。
- この降り方の場合、例えばザックの重さが重たい場合、2本のトレッキングポールには、体重に近い荷重がかかります。この時にトレッキングポールが荷重に耐えられずに縮んでしまうと、危険が伴います。なので、トレッキングポールには、荷重を掛けても縮まない強度が最も大事なのです。
- この意味で、スキーストックは継ぎ目が無いので縮むことは無く、安心して使えます。ただ山道によってはトレッキングポールを使わず、ザックに収納すべき場合もあるので、お勧めとまでは言いませんが…(スキーストックでも、ザックの両横には挿して歩くことはできます。頭の上に突き出た状態にはなりますが)。
3. 過去の経験談
- 山登りを始めたころはトレッキングポールの存在も知らず、その後しばらくして使い始めましたが、こんなに有用なものは無いなあと実感しています。ポールは必需品ですね。 私は、山道具にはあまりお金をかけない方で(安物買い(衝動買い)の銭失いは幾度かありますが…)、トレッキングポールも安いものしか使っていません。ただ、安くても機能的には何ら問題ありません。高価なものとの違いは、グリップの素材や形状、重さが少しちがうのかな…
- さて、後輩と3人で北アルプス(確か白馬山)に行った時だったと思います。一人はモンベルのトレッキングポール、私ともう一人は安物でした。途中からモンベルを使っていた後輩が「ストックが少しずつ縮むような…」と言い出し、「そんなわけないやろ!」と言っていたのですが、実際に荷重がかかると縮みました。分解しても特に不具合は無さそうで、理由は分かりませんでしたが…(気温差なのかも知れません)、しかし、3人の中では一番高価なモンベルが…
- その山行においては、特に支障は無かったのですが、下山後、後輩はストックを買い換えました。なので「モンベルのトレッキングポールは買わない方が良い」という話ではありませんので念のため。大事なことは、購入時に伸ばしてみて、しっかりと固定した上で、「荷重を掛けて縮まないことを確認して購入して下さい!」という話です。 (有名ブランドのモンベルを体験談として例に出しましたが、私は、モンベルが一番好きなアウトドアブランドです。)
- トレッキングポールには、下山時にかなりの荷重をかける場合が多々あります。そんな時、縮んでしまうと、もう安心して使えないのです。安心感、安定感の無い道具は使えません、だからポールが荷重を掛けても縮まない事は、買った後でも、必ず確認して下さい。
4. ストック使用上の注意事項
- 平たん路では気づきませんが、複数名で縦列で歩く場合、特に上り道では、前の人のトレッキングポールの先端が、場合により後ろの人の目の高さに来ることがあります。特にポール先端を地面に挿し損ねた場合、地面からはじかれ、そのまま勢いよく後ろ側にポールが振られるため、そこに後続の人が居ると、目に当たった場合、非常に危険です。トレッキングポールを使う人は当然使い方には注意が必要ですが、大事なことは、前の人がポールを使っている場合には、必ず安全距離を取ること。仲間同士でケガの加害者、被害者になるのは、最悪でしかありませんので。
- 使わない方が良い場合:急な登り、傾斜のきつい道は、登山、下山時いずれも、トレッキングポールはザックに仕舞ってください。不用意に意図せぬ所に引っ掛かった場合、非常に危険です。手を補助的につかないと歩けないような所は、ストック使用は控えるようにしてください。
- 道が極端に狭い場合等も、使わない方が無難です。
- 道が悪くトレッキングポールを使わない場合は、必ず短く縮めた上で、ザックに収納して下さい。面倒だからと手にぶら下げて歩くと、これも不用意に予期せぬところにひっかかり危険です。
5. トレッキングポールの手入れ
- 私も大した手入れはしていないので、偉そうなことは言えませんが…
- 雨に降られた、草むらをあるいて露で濡れた場合等は、帰宅後に分解し、中を拭いて下さい。もう面倒なら、分解してそのまま放置して乾燥させて下さい。濡れっぱなしだと、アルミ製のポールは腐食しやすくなりますので。
- 濡れてなくても、たまに分解して、拭き清掃を。私はカーボンのポールは使ったことがありませんが、アルミ製のポールは、伸縮、締め付けに伴い内側がわずかに削れるためか、少しずつ汚れます。手入れをしないと機能に影響が出るかも知れません(締めてもしっかり締まらない等)。
- なお、注油はしないで下さい。固定できなくなる可能性があります。
6. トレッキングポールの選び方
- 私もいろんなポールをモニター比較した訳ではなく、使用経験は3種類だけなので、経験から言える説明をします。
- 「グリップの形状 T型かI型か?」 : ポールを使い始めの頃は、ポールを握っていたので、手が疲れることより、グリップはT型の方が使いやすいのではと思っていました。恐らく、初めてストックを使われる方は、T型の方が力が入れやすいので、使いやすいと思います。
- ただ、トレッキングポールは2本使用した方が、1本よりもはるかに効率的です。後述しますが、Wストックがお勧めです。で、Wストックの場合は、スキーストックと同じI型の方が使い勝手が良くなります。なので、I型を2本購入下さい。始めは1本で、慣れたら2本でも構いませんので。
- 「固定(締め付け)方式は?」 : 伸縮に伴う締め付けの方式については、私はスクリュー式しか使ったことが無いので、以外の方式は分かりません。まあ比較的安価なモデルはスクリュー式だと思います。
- 「ショックアブソーバーは必要?」 : ショックアブソーバーの有無については、あっても無くてもどちらでも。ショックアブソーバー付きは、中にバネが入っていて、地面に突いた際のショックを和らげてくれます。それはそれでメリットはあります。
- でも、ショックアブソーバーが付いてなくても、大して気にはなりません。ショックアブソーバー付きの方が、バネが入っている分、重たいようですが、さほどの差は無く、要はどちらでも ということです。
- 私は、最初に購入したのが、「バネ入り」でした。よく分からない海外製でしたが安くて重宝していました。でも、とある山行の下山時、もう使わないからと縮めた後、ザックに収納し忘れて、そのまま忘れて帰ってしまい紛失… で、仕方なく次に購入したのは「バネ無し」でしたが、バネが無くても特に気にならず、確かにバネの有無は体感しますが、まあ「どっちでも良いかな」というのが実感でしたので。
- 「メーカー品が良いの?」 : まあ道具は何でも、メーカー品を買っておいた方が無難だし、それなりの理由はあります。でも最近は、トレッキングポールはホームセンターやディスカウントショップでも安価で手に入れられます。ただ選ぶ場合には、可能であれば伸ばしてみて、「荷重を掛けて縮まないこと」を確認して下さい。あと、極端に細いのはやめておいた方が無難です。
- 「グリップの形状」 : I型でも、よく見ると色んな形がありますが、握りの上部と下部が広がっている、いわゆるオーソドックスな形のもので結構です。グリップは普通に握る場合と、上から掴むように握る場合があるので、上から掴みやすい形のものが良いです。大事なのは、上から掴みやすい形かどうか? です。これは登りにおいても下りにおいても、上から掴む、上から体重をかける場合が多いからです。
- 「ストラップがしっかりしているものを」 : グリップの所に付いているストラップは、しっかりとした平紐で長さ調整が出来るものを選んで下さい。ヒモ状のものはダメです。後述しますが、実は登りにおいては、グリップを握って力を入れるよりも、ストラップで手首に負担を掛けるようにして(握らないようにして)登ります。なので、ストラップはしっかりと力が掛けられるものである必要があるのです。長さ調整が簡単に出来て、且つ力を入れても長さが変わらないことが大事です。
- 「石突きがないのはダメ」 : トレッキングポールであれば、先端は地面に突き挿せるように少し細くなっています。この部分を石突きと言います。そして石突きには普通、ゴムカバーが付いています。ゴムカバーは先端の保護カバーであり、また舗装道路等をストックを使って歩く場合には、ゴムカバーをつけたままポールを使います。ウォーキング用として売られているポールには、カバーと思っていた先端のゴムが外れない、石突きの無いものがありますので、先端形状は確認して購入して下さい。
7. トレッキングポールのパーツについて
- 「ゴムカバーは外さないの?」 : サイトによっては、登山路でも、ポールの石突きによって路が傷むから、ゴムカバーは付けたまま と書かれているサイトもあります。まあ人それぞれですが、傾斜の緩い比較的登りやすい路ならそれでも構わないのですが、少し路が険しくなってきた場合、ポールを地面に突き損なうと危ない場合もあり、やはり地面にしっかり刺さる石突で歩く方が安全だと思います。私は基本、ゴムカバーは外します(舗装路の場合はゴムカバーは被せます)。
- 「バスケットは外すの?」 : これも本で読んだ情報ですが、その本の著者の場合は、バスケットはトレッキングポール購入後、すぐに外すと書かれてありました。理由は、石と石の隙間等、狭い場所にポールを挿したい場合、バスケットがあると邪魔になるからです。山を歩いていても、バスケットを外されている方は結構います。外していた方が、ザックに収納しやすいメリットもあります。
- バスケットは、雪山の場合には、ポールを挿したときに雪に沈まないように、雪道用の径の大きなバスケットもあります。
- バスケットがあると、石と石の隙間のように、狭い所に挿したい場合に邪魔になることは多々あります。でも、私自身は気にならないので、外したことはありません。まあ、付ける、外すは好みの問題で良いと思います。